2024.06.06 07:04
楽園
プレヴェール
何千年かかっても
まだ十分には
言い尽くせない
君がぼくを抱きしめ
ぼくが君を抱きしめた
その束の間の永遠の一瞬
一つの星の地球
その地球の上の
パリの町
パリのモンスーリ公園の
冬の陽の射すある朝のこと
2024.06.05 11:39
虚数
ジョン・ウォリス
ある人が1600だけの土地を得たが、その後に面積3200の土地を失った。全体として得た面積は-1600とあらわせる。この負の面積を持つ土地が正方形をしていたとすれば、その1辺の長さというものがあるはずである。40ではないし、-40でもない。1辺の長さは負の平方根、すばわち、√(-1600)である。
2024.06.04 04:23
小さな公園
カミングス
ちい
さ
さ
あ
いこの公園は空
虚で(だれもか
ものどこでもなく
僕のほかに6
匹のすずめ
と秋と
雨
あ
め
雨あめ雨
2024.06.02 10:55
善悪の彼岸
ニーチェ
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ
2024.06.01 06:10
一握の砂
石川啄木
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ
2024.05.31 09:17
秋の接吻
滝口雅子
ひとを愛して
愛したことは忘れてしまった
そんな瞳(め)が咲いていた
萩の花の白くこぼれる道
火山灰の白く降る山の道
すすきを分けてきた風が
頬をさし出して
接吻した
ひとを愛して
愛したことは忘れてしまった
2024.05.30 05:43
倚りかからず
茨木のり子
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
2024.05.29 03:32
経済学・哲学草稿
カール・マルクス
人間が人間らしくあり、人間が世界にかかわるその関係も人間らしいものであるならば、そのとき、愛を引き出しうるものは愛のみであり、信頼をえるには信頼をもってしなければならないといえよう。もし君が芸術を楽しみたいと思うならば、芸術を解する眼を養わなくてはならないし、他人に感化を与えたいと願うならば、他人を鼓舞し励ますような力をもった人物でなければならない。人間や自然に対する君の関係は、すべて、君の意志するするものにみあった、君自身の真実の生命を表現するものでなければならない。君が人を愛しながら相手に愛を呼び起こしえないなら、つまり、君の愛そのものが愛を生み出しえないならば、あるいは、愛する人間としての君が、生命を表現することによって、愛される人間になりえないならば、君の愛は不毛であり不幸である。
2024.05.28 17:20
毛虫
アポリネール
働く事は金持ちをつくる
貧乏な詩人よ、働こう!
毛虫は休みなく苦労して
豊麗な蝶になる