2024.08.17 18:15
水平社宣言
1922年(大正11年)3月3日
全国に散らばっている、われわれ差別を受けている人々よ、団結せよ。
長い間、いじめられてきた仲間たちよ、解放令がだされてから約50年の間、われわれのためといって、多くの人々がさまざまな方法で行った運動は、効果をもたらすものではなかった。同情やあわれみに根ざした運動では差別はなくならないのだ。このことを思えば、今、われわれ自身から人間を尊敬することによって、自ら自由と平等を求める集団運動をおこすのは、当然のことである。
仲間たちよ、われわれの祖先は、自由と平等を心から求め実行してきた者であった。厳しい支配政策の犠牲者であり、たくましく社会や文化を支えてきたものであった。心を引き裂かれるようなどんなに厳しい差別の中でも、人間としての誇りは失わなかった。そして、今、その犠牲者のわれわれが、差別を投げ返す時がきたのだ。われわれが、差別を受けてきた者であることを誇りうる時がきたのだ。
われわれは、自分自身を低くみたり、臆病になったりして、これまでたくましく生きてきた祖先をはずかしめたり、人間の尊厳をおかしたりしてはならない。人の世がどんなに冷たいか、人間を大切にすることが本当はどんなことであるかを知っているからこそ、われわれは、心から人生の熱と光を求め、その実現をめざすものである。
水平社はこのように生まれた。人の世に熱あれ、人間に光あれ。
2024.08.17 18:06
新しい世界
平塚らいてう
猫又坂を下り、青田越しに向い側の森をのぞむと、朝などは遠方の竹林に白鷺がいくつも点々と、とまっていました。大塚の坂を下りながらの眺め、護国寺の赤い門、蒼い蒼い大空、雪の富士、黄葉した銀杏の大樹など――女学生時代の純な心に映った、通学の朝夕の自然の美しさ、その鮮やかさ、のびやかさは、おそらく生涯忘れ得ぬものでしょう。わたくしはこの道を、朝に夕に、新しい世界に生きるよろこびに胸を躍らせながら通いはじめたのでした。
元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。/今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である。/さてここに『青鞜』は初声を上げた。/現代の日本の女性の頭脳と手によって始めて出来た『青鞜』は初声を上げた。/女性のなすことは今はただ嘲りの笑を招くばかりである。/私はよく知っている、嘲りの笑の下に隠れたる或ものを。